Ophthalmic Expert Meeting in Kurume (9/11:ハイブリッド開催)のご報告
更新日:9月17日
「Ophthalmic Expert Meeting in KURUME」が開催され、東京大学医学部附属病院 眼科 助教の柿原伸次先生より「DMEにおける抗VEGF治療と黄斑前膜形成 ~イメージング研究留学からの知見~」、昭和医科大学 保健医療学部 教授の神谷和孝先生より「ICLの現状とこれから ~エビデンスに基づく正しい理解と新たな取り組み~」と題してご講演いただきました。
柿原先生からは、糖尿病網膜症に関するイメージング研究の成果と、米国シカゴでの研究留学についてお話しいただきました。もともとは英語が得意ではなく、海外留学を身近に感じていなかったそうですが、研究助成の受賞をきっかけに留学を具体的に考え、当時Northwestern Universityに所属されていたAmani Fawzi先生のもとで研究を開始されました。

留学先では自ら研究プロジェクトを立案することが求められ、統計解析や画像解析の手法を学びながら研究を進められました。OCTやOCTA、超広角眼底写真、蛍光眼底造影などから得られる情報を定量化し、血管密度、FAZ、網膜厚、非灌流領域、漏出、毛細血管瘤など、多彩な指標を研究に活用されていました。さらに、retinal ischemic perivascular lesions(RIPLs)と糖尿病網膜症重症度との関連なども示され、画像所見を客観的に定量化することが、病態の理解や新たな研究へつながることを改めて感じました。
黄斑前膜(ERM)については、糖尿病患者における抗VEGF治療回数とERM形成との関連や、抗VEGF薬によってERM形成への影響が異なる可能性が示されました。DME治療を網膜厚や視力だけでなく、硝子体網膜界面の変化から捉える興味深い内容でした。
留学生活についても、単身で渡米した1年目は研究・生活ともに苦労した一方、2年目には研究が軌道に乗り、現地での生活も楽しめるようになったことを、ユーモアを交えてご紹介いただきました。厳しいシカゴの冬や物価の高さ、自炊生活、大谷翔平選手の試合観戦などのエピソードもあり、海外留学を身近に感じることができました。また、留学には多くの費用を要するため、助成金を獲得する重要性についても触れられました。「海外留学は自分が“変化”するチャンスの一つ」というメッセージも印象に残りました。

続いて神谷先生からは、ICLの歴史、現在のエビデンス、今後の展望まで幅広くご解説いただきました。屈折矯正手術の種類と使い分け、Phakic IOLの適応、レンズ固定位置による特徴など、基本的な事項から分かりやすく整理していただきました。
近年ICLは急速に普及していますが、「白内障になりやすくならないのか」「将来の白内障手術が難しくならないのか」といった疑問もあります。現在のHole ICLでは白内障発症が大きく減少していることに加え、ICL摘出を伴う白内障手術を実際の動画でご提示いただきました。長期間経過した症例でも周囲組織との癒着が比較的少なく、想像以上にスムーズに摘出できることが印象的でした。トーリックICLについても、術後長期間が経過した症例で位置調整が可能な場合があることが示されました。
また、ICL術後眼に白内障手術を行う際の眼内レンズ度数計算についても解説いただきました。大学病院ではICL手術そのものに接する機会が限られていても、今後ICL術後患者の白内障手術を担当する機会は増えると考えられ、実臨床に直結する内容でした。
さらに、老眼矯正ICLや、レンズサイズ決定へのAI活用についても紹介されました。術後のvault予測に加え、生成AIを用いて術後画像を予測する研究も進められており、社会実装を見据えた今後の展開にも期待が持たれます。

今回の2講演は、糖尿病網膜症のイメージング研究とICLという異なるテーマでしたが、いずれも臨床上の疑問を研究へつなげ、新しい解析手法や技術を取り入れながら臨床へ還元していく内容でした。臨床・研究の両面で多くの刺激をいただいた講演会となりました。
(文責:加藤喜大)









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