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 臨床・研究のトピックス

眼科医会会員の先生方には日頃より大変お世話になっております。昨年度ののべ外来患者数は38,735名でした。多数の患者様をご紹介頂き、厚くお礼申し上げます。

2019年4月より待ち時間短縮のため、予約表に記載されている予約時間順で患者様をお呼び出ししています。よりよい患者サービス向上に向け教室員一丸となって取り組んでいます。

久留米大学病院眼科における専門外来は、前眼部、ぶどう膜、緑内障、黄斑、網膜硝子体(静脈閉塞症、網膜剝離など)、糖尿病網膜症、神経眼科、外眼部、斜視弱視、未熟児があります。

昨年から積極的にアザレアネット(インターネット回線による久留米診療情報ネットワーク)を用いた病診・病病連携を推進しています。アザレアネットを利用することで、患者様に無駄なく一貫したきめ細かな医療を提供でき、患者様にも好評です。お陰様で、近隣の病院や診療所のアザレアネットへの登録数が徐々に増加しています。これからも筑後地区全体で各種眼疾患の診療や生涯学習を推進していきたいと思います。

以下に、現在の久留米大学眼科での取り組みについてご紹介させていただきます。

 

前眼部外来

 角膜移植は、DSEAK(Descemet’s stripping automated endothelial keratoplasty)とDALK (Deep anterior lamellar keratoplasty) が増加し、全層角膜移植は減少しています。現在、各術式の治療予後予測因子を検討中です。

初発翼状片手術は、従来法から侵襲の低い方法に変更し、患者様に好評です。一方、再発翼状片手術は、羊膜移植を併用することで良好な成績を得ており、論文報告しました(Monden Y, et al. Int Med Case Rep J. 2018)。さらに、正面視でも複視がある重症の瞼球癒着を伴った症例には、羊膜移植と保存角膜輪部を併用し、全例で軽快しています(論文投稿中)。

羊膜移植は、再発翼状片に伴う角膜上皮欠損の治療にも良い適応です。角膜移植の適応とならない水疱性角膜症で上皮欠損を繰り返す例には、疼痛緩和、治療用コンタクトレンズからの離脱も期待できますので、是非ご紹介ください。難治性の眼表面疾患に対する羊膜移植については、久留米大学は2017年に他施設に斡旋可能なカテゴリーⅠの認定を受け、羊膜の斡旋を開始しています。今後も羊膜の必要な施設へ羊膜の斡旋を迅速に行ってまいります。斡旋の手続きは久留米大学眼科学講座のホームページ(https://www.kurumeeye.com/)に詳細を記載していますのでご覧頂けますと幸いです。

 ウイルス性角膜炎の補助診断として従来のリアルタイムPCR(HSV, VZV, CMV)に加え、内皮炎・虹彩炎合併例にはStrip PCRを先進医療で行っています。

 

ぶどう膜炎外来

 当科において1年間のぶどう膜炎の初診患者は80〜90例で、そのうちサルコイドーシスとVogt-小柳-原田病が20%程度を占めています。その他に、急性前部ぶどう膜炎、ヘルペス角膜ぶどう膜炎、その他のウイルスや寄生虫による虹彩炎や網脈絡膜炎など多様な炎症性眼疾患の診断・治療を行っています。

 非感染性ぶどう膜炎と感染性ぶどう膜炎の鑑別には十分に注意するように心がけ、ウイルス性ぶどう膜炎の補助診断として眼内液を用いたStrip PCRを先進医療で行っており、原因ウイルスの迅速診断・治療決定に応用しています。 

 治療は、各患者さんに最適で副作用の少ない治療法を選択するようにしており、生物製剤であるインフリキシマブ・アダリムマブも積極的に取り入れています。

 また、近年、眼内悪性リンパ腫の患者数は増加しており、当科においても、2006〜2017年は8例でしたが、2018年8例、2019年(7月まで)3例と急速に増加しています(眼内もしくは中枢神経計原発および眼内転移も含む)。眼病変に対する治療は、メトトレキサートの眼内注射ですが、中枢神経系病変を合併した症例や眼内転移の症例には全身治療や放射線治療を併用しています。しかし、眼内再発が多く、5年生存率が不良であることが問題です。今後は、血液内科、脳神経外科などと連携を組んで集学的治療を行う予定です。

 

緑内障外来

 緑内障外来では、週に約100人弱の緑内障患者を診療しています。当科では以前から低侵襲の緑内障手術であるMIGS(micro-invasive-glaucoma-surgery)を積極的に取り入れております。ナイロン糸を用いたスーチャートラベクロトミー眼内法(S-LOT ab interno)やKAHOOK、谷戸式マイクロフックを用いたMIGSをはじめ、従来のメタルプローブを用いた線維柱帯切開術(trabeculotomy)も症例に応じ行っており、各術式の成績を統計学的に比較し、積極的に学会報告を行っています。進行した緑内障に対しては従来通りの線維柱帯切除術(trabeculectomy)を、難治性緑内障に対してはAhmed glaucoma valve(AGV)を用いたロングチューブシャント手術も積極的に取り組んでいます。平成30年度の手術内訳は線維柱帯切開術が162例でそのうちMIGSが約8割を占めています。線維柱帯切除術は61例、ロングチューブシャント手術は24例であり手術件数は増加しています。さらに本年度マイクロパルス経強膜的毛様体光凝固 (MP-CPC)治療装置の導入が決定し、さらなる低侵襲治療を行っていきます。

また、当科では、診療時間中の眼圧が良好であるにも関わらず視野が進行している症例や正常眼圧緑内障の診断などに対して、入院(1泊2日)での眼圧日内変動検査を積極的に行っています。日中は座位・夜間は仰臥位で眼圧を測定し、実生活での姿勢を考慮した検査を行っています。夜間仰臥位で眼圧上昇を認める症例があり、姿勢を加味した眼圧日内変動検査の重要性を報告しています。

 

黄斑外来

 黄斑外来では主に、加齢黄斑変性、近視性脈絡膜新生血管、中心性漿液性脈絡網膜症の診断、治療を行っています。加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法では、病型や全身状態を考慮して適切な抗VEGF薬を選択しています。当科ではアフリベルセプト硝子体内投与treat and extend法の4年成績を報告し(2018年網膜硝子体学会)、treat and extend法の有用性を呈示しています。加齢黄斑変性の患者数は年々増加しており、今後、アザレアネットを用いた病診連携などの取り組みが必要と考えています。また、中心性漿液性脈絡網膜症はpachychoroid neovasculopathyと紛らわしい場合があり、OCT angiographyなどイメージング手法を駆使して診断し、光線力学療法や抗VEGF薬治療などの治療方針を決定しています。さらに、新薬の臨床治験にも積極的に取り組んでいます。

 

網膜硝子体外来・糖尿病網膜症外来

 網膜硝子体外来では主に網膜静脈閉塞症の疾患を診察しています。黄斑浮腫に対しては抗VEGF薬硝子体内注射(1+PRN) を基本に施行しています。病態に応じて光凝固、ステロイド局所注射や硝子体手術を個別に組み合わせて行っています。AIを用いた網膜静脈閉塞症眼底の自動診断にも参画しています。

糖尿病網膜症外来では糖尿病黄斑浮腫、増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症に伴う血管新生緑内障などを治療しています。糖尿病黄斑浮腫に対しては網膜静脈閉塞症同様に抗VEGF薬硝子体内注射を中心に行っています。抗VEGF薬治療は糖尿病網膜症自体も改善作用があり、投与法は3+PRNを基本にしています。

増殖糖尿病網膜症は適応があれば硝子体手術を積極的に行っています。難治性な血管新生緑内障に対しては、緑内障専門医と協力してAhmedバルブ®を用いたチューブシャント手術を積極的に行っています。

いずれの外来でもFA/IA、広角眼底撮影、OCTやOCT-angiographyなどのイメージング手法を駆使して戦略的に治療方針を決めています。

裂孔原性網膜剥離、黄斑円孔、黄斑上膜、黄斑下血腫、レンズ脱臼、眼内炎、眼外傷など他の網膜硝子体疾患に対しても、広角観察システムなどを用いた小切開低侵襲硝子体手術を心がけています。当院での裂孔原性網膜剥離の初回復位率は約95%です。また、3D Heads up surgeryが行える「NGENUITY ®」を導入し、患者様への光毒性の軽減などより低侵襲の高精度手術を行うと同時に、若手術者育成にも取り組んでいます。さらに、当科オリジナルの開瞼とドレーピングを同時に行え、感染防御機能の高いリドレープ®を用いることで、より安全な手術治療を実践しています。

 

神経眼科外来

 神経眼科では、患者さんの訴えをよく聞き、症状と徴候を正確に捉え、病因と病変部位を特定できるように努めています。そのため神経眼科の基本的な診察や検査はもちろん、最新の画像診断機器やバイオマーカーも駆使して診断しています。また神経眼科が対象とする疾患は、脳神経外科、神経内科、耳鼻科など複数の専門分野にまたがることも多く、他科の専門医との連携を迅速かつ密にしたチーム医療を行っています。

最近の臨床研究としましては、まず原因不明の耳側視野障害として紹介された視神経鼻側部分低形成5例8眼の臨床的特徴をまとめ、視交叉症候群との鑑別にcpRNFL OCTやDM/DDが有用であることを報告しました(Haruta, et al. Eye, 2017)。またRAPDがなく、眼底所見が乏しかったため原因不明とされた薬剤性、浸潤性、虚血性の両眼性球後視神経症の3例を報告し、球後視神経症の早期の診断にGCC OCTが有用であることを報告しました(Haruta, et al. Int Med Case Rep J, 2018)。さらに前部虚血性視神経では、視神経の循環障害に加えて、黄斑部の漿液性網膜剥離により視力低下をきたすこともあることを報告しました(春田ら.眼臨紀, 2018)。最後に視神経炎として長年誤診されていた片眼性網膜変性疾患の1例を報告し、先入観にとらわれずに正確に診断することの重要性を訴えました(春田ら.神経眼科, 2019)。

これからも個々の症例を大切にして診断治療技術を磨き、患者さんを中心とした診療を心がけていきます。

 

外眼部外来

 外眼部外来では主に眼瞼下垂や眼瞼内反などの眼瞼疾患、眼瞼腫瘍、眼窩腫瘍の診断と手術治療を行っております。

 

未熟児網膜症外来

 近年、新生児医療の発達により超低出生体重児(出生体重1000g未満)の生存率が大きく改善したことで、全出生数に対する低出生体重児の割合が増加し、未熟児網膜症診療の重要性は増しています。当科では週2日NICUへの往診を行っています。治療は原則網膜光凝固術としていますが、未熟児網膜症の重症例に対しては、抗VEGF薬であるベバシズマブ硝子体注射の方が網膜光凝固術より成績良好との報告があり、使用可否をNICU専門医と相談しながら施行しています。近い将来、ベバシズマブより薬剤のクリアランスが速く全身的な安全性が高いと言われているラニビズマブやアフリベルセプトが、日本でも認可されると考えられ、当科でも導入を予定しています。また、未熟児網膜症既往症例の網膜構造についての多施設臨床研究にも参画しています。

 

ロービジョン外来

 ロービジョン外来は、福岡県眼科医会スマートサイト(ロービジョンケアネットワーク)の運用開始に先駆け、今年の4月から約10年ぶりに再開することになりました。

ロービジョンとは“成長・発達或いは日常生活・社会生活に何らかの支障を来す視機能または視覚”であると定義され、ありふれた眼疾患の患者が対象となります。診療は1人に対し1-2時間かかるので、月に2回、1人ずつしか診れない状況ですが、問診から補装具と日常生活補助具の選定までの時間を短縮出来るように努力し、効率化を目指します。

また近年、タブレット端末であるiPadやスマートフォンのiPhoneに代表されるICT(imformation and communication technology)機器が新しいロービジョンエイドとして導入されており、当科でも早期に導入してきたいと考えています。

今後も地域医療と眼科学の発展に取り組んで参りたいと思います。先生方の変わらぬご指導、ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

(​2019年福岡県眼科医会報より)

       久留米大学病院 眼科
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67
外来(患者様専用)    TEL: 0942-31-7621

医局(学生研修医用) TEL: 0942-31-7574  

                            FAX: 0942-37-0324

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