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光をあたえる眼科学をめざして

2018年4月より久留米大学医学部眼科学教室を担当させて頂いている吉田茂生と申します。久留米大学眼科は90年以上の歴史を持つ伝統ある教室で、これまで多くの人間性豊かな良医や一流の医学研究者を輩出してきました。
 久留米大学眼科は伝統的に臨床重視の教室です。現在9つの臨床専門グループ(網膜硝子体外来、糖尿病外来、黄斑外来、緑内障外来、前眼部・角膜外来、ぶどう膜炎外来、外眼部・眼瞼形成外来、神経眼科外来、斜視・弱視外来)に専門家を配置し「One Team」で多様な疾患に対応できる体制を整えています。立地上医療圏が久留米市近郊のみならず広く福岡県南にまたがっており、久留米大学病院にはあらゆる疾患が紹介されてきます。このため、当科では豊富な症例を経験することができます。令和元年の外来患者は40,707名でした。
 着任以来、諸先輩方が築かれた「手術治療の久留米大学眼科」の伝統を堅持しつつ診療面で常に世界最先端であるよう心がけています。最近、眼底三次元画像解析システム、眼内レンズ度数計測装置、超広角光干渉断層計・血管造影装置、黄斑視感度検査装置、マイクロパルス半導体レーザー緑内障治療装置を更新しました。さらに手術機器として、顕微鏡を覗かずに高難度手術を行える眼科用3次元映像Heads up手術システムを導入・稼働しています。本Heads up手術システムにより光毒性を軽減し、患者さんに優しい高精度手術を行うと同時に若手医師に効果的な教育を実践しています。導入した先端機器と従来からの診療機器群を有機的に駆使して、地域の患者様に最善・最良の眼科医療を提供すべく日々診療に取り組んでいます。
同時に、「Withコロナ」時代にあって、患者さんに効果的、一貫した診断治療を提供する目的で、アザレアネット(久留米診療情報ネットワーク:八女筑後、佐賀とも連携)によるインターネット回線を用いたよりよい地域医療体制構築も試みています。
 医局員の勤務環境の改善にも取り組んできました。医局員の雑用を緩和し、教育・研究時間を確保できるよう、診療の補助や臨床研究をサポートする医療クラークを雇用しています。働き方改革を見据えて白内障手術のムンテラロボットも導入しました。また、眼科病棟内の医員室の新設と臨床研究棟の教官室、医局、研究室を改装しました。コロナ禍でのWeb会議システムの充実を図り、若い先生達がコロナを気にせず学術活動に取り組めるよう配慮しています。
 高水準の眼科医療も、最先端の研究もすべてよき人財によってなされます。「教室の盛衰は人に始まり人に終わる」ということを肝に銘じて、学生・若手医師に対する教育を重要課題として取り組んでいます。真摯な教育は、必ずや志ある学生・若手医師の心に響くはずです。「一に人格、二に学問」を合い言葉に、一人でも多くの次代を担う科学的探究心を兼ね備えた心優しき良医の育成に全力を挙げています。教育は、上級医が研修医を、研修医が学生をマンツーマンで教える屋根瓦方式を採用し、「教えあい、高めあう」雰囲気を大切にしています。本年度よりWebを用いた「研修医クルズス」を開始しました。また、「久留米大学眼科研究会」や「有明眼科懇話会」をはじめとして年に10数回国内外の一流講師をお招きして、臨床、研究や病診連携など様々なテーマで研究会を行っています。さらに、若手医師に国際性を身につけてもらうべく、日中韓の網膜ミーティングやハーバード大学眼科教授による講演会など国際交流も推進しています。
 研究面においても、診療面同様、眼科臨床研究棟分子生物学研究室にクリーンベンチ、インキュベーター、フリーザー、製氷機、超純水装置、顕微鏡、タンパク解析装置、AI用コンピューターなどを更新しました。眼科臨床大学院生、研究補助員と共に、日常診療で生じた疑問を解決すべく、分子生物学、病理学、医工学など多面的アプローチを駆使したトランスレーショナルリサーチを展開しています。眼内増殖や黄斑浮腫のバイオマーカー探索や難治性眼感染症に対する網羅的PCR検査システムを用いた起炎菌同定など、臨床に直結する研究を行っています。
 久留米市は福岡県南部の中核都市です。この街には独自の文化的洗練があり、野村総研の調査によると成長可能性都市の全国5位にランクされています。豚骨ラーメンや焼き鳥とワインなどのB級グルメも絶品です。大都会の喧噪や誘惑からは適度に離れた環境に身を置くことができる一方、博多まで新幹線で15分程度と交通のアクセスが大変よい都市でもあります。今後創立100周年に向けて臨床・教育・研究をバランスよく活性化し、久留米大学眼科に一人でも多くの若き医師が集い、「夢と志」を育める教室にするべく教室員一丸となり邁進したいと思います。どうぞ温かいご指導の程、よろしくお願い申し上げます

主任教授 吉田 茂生

[略歴]

1993年 九州大学医学部卒業

1995年 九州大学大学院医学系研究科博士課程

1999年 ミシガン大学客員研究員

2002年 九州大学大学院医学研究院眼科学・助手

2007年 福岡大学筑紫病院眼科・講師

2010年 九州大学大学院医学研究院眼科学・講師

2015年 九州大学大学院医学研究院眼科学・准教授

2018年 久留米大学医学部眼科学講座・主任教授

日本眼科学会 評議員

日本糖尿病合併症学会 評議員

日本糖尿病眼学会 理事

日本眼循環学会 理事

日本網膜硝子体学会 理事

The Retina Society Active Member

教授の役目は人づくり 若手が育つ教室とは-

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現在窮乏 将来有望

Withコロナ時代の理想的環境下で、豊富な症例経験に基づき、科学的探究心を兼ね備えた心優しき良医を育成

さらなる良医になるためになぜ研究が有用か

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